2005年04月14日

サマリア

samaria2.jpg

タイトル:サマリア
製作  :2004
監督  :キム・ギドク
出演  :クァク・チミン、ハン・ヨルム、イ・オル

女子高生が二人いればどうなるでしょうか?
まあ二人いれば友情がちょっとした恋愛感情になり、
旅行しよう、何って言ってじゃあお金はどうする?ってなったら
そりゃあ手っ取り早く、援交でもしときますかって
ネットで相手探したりするんだろうな。
なんか日本の女性漫画家が描きそうな話だが、
キム・ギドクは冷めた視線でそんな物語を描いている。



この作品は三章に分かれており、
第一章が「バスミルダ」、第二章が「サマリア」、第三章が「ソナタ」となっており
「バスミルダ」はインドの伝説の娼婦のことであり、
「サマリア」はユダヤ人から侮蔑されていた聖書に出てくる土地の名前で、
「ソナタ」は器楽曲の作品の意味であり、韓国の大衆車の名前でもある。

この映画の世界の基本にあるのは「許し」であるように思う。
許されたい許したいというのが原動力となり物語が動き出す。
ヨジンはチェヨンに許されたい。
ヨジンの父親はヨジンを許したい。
しかし、この「許し」の対象となる人物との関係はすれ違っている状態でのものであり、
それがこの作品の冷めた印象を持たせる一因となっている。

では、第一章におけるチェヨンは誰を「許し」の対象とするのか。
チェヨンは自分をバスミルダと呼んで、とヨジンに言い
知らない男と金のためにセックスするときも、笑顔すら浮かべている。
チェヨンには人間らしい葛藤とか苦悩が見当たらない。
これは勝手な意見なのだが、チェヨンは「許し」の対象を必要としない
象徴的な存在であるのではないか。
それは、全てを「許し」ているし「許され」ている存在であり
天使(良い意味でも悪い意味でも)のような存在じゃないかと思うのです。
そんなチェヨンが死ぬことによって、チェヨンから自らの存在に対する
「許し」を得ていたのが、自らが誰かを「許し」、そして「許され」る存在にならざるを得なかったのではないか。
ヨジンは母親がいない。ということはヨジンの父親であるヨンギは妻を失っている。
ヨンギはヨジンの援交しているところを偶然見かけてしまうことにより、
刑事であり温和な父親から、援交相手の男性を殺すほどの存在になる。
そこで人を殺す動機は、男性が憎いというよりかは妻に対する「許し」、
そして娘を「許し」たいといった気持ちの方が強いように感じる。
いずれにせよ「許し」の対象とのすれ違いがある。

第三章ではその不器用な関係しか築けない親子二人が母の墓へ行くのだ。
そこで車を通して新たな親子の関係性が築かれることになるのだが、
そのシーンはとても感動的であります。
直接的ではない「許し」を通して新しい関係を築かれるこの映画は
韓国の儒教的な価値観も大きく反映しているだろうが、
不器用な人間のどうしようもない思いを無骨にだが一歩進めていくような
作品ではないでしょうか。

はじめ観たときはなんか北野武の映画みたいだなとか思ったり、
ちょっと物足りないなとか思っていたが、
こうやって振り返ってみると、なかなか面白いと思ってしまう。
俺もずいぶんいい加減な人間だな・・・。

(文化遺産)

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posted by つるっと温泉卵 at 16:26| Comment(2) | TrackBack(6) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。コメント&TB失礼します。「許し」そうですね、贖罪のために抱かれるヨジンと、自首するヨンギ。夢の中で父に殺されるヨジンは、父に対する許しを請いていたのでしょうか。
Posted by ソウウツ at 2005年04月17日 01:07
突然のコメントで失礼します
いやあ、こういう事書きたかったんですよ。
私は、この映画が良過ぎて何書いたらいいかわかんなくなってしまいました。
「許し」の必要な親子と「許し」を超越した天使。
うん
Posted by stud!o yunfatのしん at 2005年04月22日 03:22
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