2006年06月03日

ストレイト・ストーリー

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タイトル:THE STRAIGHT STORY
製作  :1999年
監督  :David Lynch 
出演  :Richard Farnsworth、Sissy Spacek、Harry Dean Stanton

『イレイザー・ヘッド』で異形の世界を作り上げ『ブルー・ベルベット』のような変態的カルトムービーを撮ったリンチが作り上げた感動作。
狂った描写が無い。変態らしさが無い。脳みそを吸い取られるノイズが無い。リンチ好きにとっては「なんだこれ?」と思っただろう。

そうなるのも当たり前の事だと思う。なぜならこの作品はリンチが監督をした映画で初めて他人が書いた脚本であり、原作は実話に基づいているからだ。
とは言っても脚本を書いたメラニー・スウィーニーはリンチの奥さんである。

だがこの映画はどんなに涙を流して感動してもやはりリンチの映画なのだなと理解できた。


73歳の主人公アルヴィン・ストレイト(リチャード・ファーンズワース )は田舎町に住む老人だ。周りの友人も年老いた気の良い奴らだ。
みんなそろいもそろってチェックのシャツを着ている。

頑固であるが故に些細な事で十年来仲違いしている兄が脳卒中で倒れたと連絡が来る。数日後アルヴィンは兄に会いに行くを決意する。
足腰が弱くなり視力も衰えているアルヴィンは時速4マイルのトラクターで550qもの距離を6週間かけて辿り着く。

大まかなストーリーは以上の通りである。

アルヴィンがそんな無謀な旅をする事を娘のローズ(シシー・スペイセク)は心配する。ローズは軽い障害を負っているがアルヴィンを父として心から愛している。
ローズは不幸な出来事で息子を手放す事になる。そして息子の事をいつも思い出している。

そんなローズとアルヴィンが暗い部屋で嵐の夜に窓の外をずっと眺めているシーンがある。この時両者が考えていた事を想像するだけでこの映画を観る価値があると思った。

アルヴィンは旅をしながら色々な人に出会う。車で鹿に突っ込み発狂しているリンチらしさ満載のキャラもいれば家出をして放浪中の若い妊婦、家の裏に居座らせてもらった夫婦、双子の自動車整備師、自転車レースをしている若者達など他にも様々な人々と出会う。
それらの人々との会話が一つ一つ胸に突き刺さり、アルヴィンの兄に対する思いが伝わり何度も目頭が熱くなる。

のんびりとした時間の流れ、気持ちの良い景色、満点の星空の風景がアルヴィンの兄との仲違いがいかに長いものだったか、そしてそのゆっくりとした時間の流れにアルヴィンの強い意志を感じる事ができる。

リンチは過去に父親の仕事の関係で森林地帯を転々としていた時の事を、雄大な自然がありそこに住む人々が皆のんびりと平和に生活していたのを見てノーマン・ロックウェルの絵みたいだったと言っている。
アルヴィンが出発するのを不安げに見つめるローズ、これからの旅に不安と楽しみを併せ持つアルヴィン、使い古されたトラクター。これらがノーマン・ロックウェルの『息子の旅立ち』に通ずる物があるのではないかと思う。

長い長い旅、距離だけではなく心の旅を終えアルヴィンは兄ライルの下に辿り着く。辿り着いてからこの映画が終わるまではわずか数分である。
だがこの数分が旅をした6週間分ではなく仲違いした10年間でもなく、兄弟として生きてきた数十年間を想像せずにはいられなかった。

(knz)


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posted by つるっと温泉卵 at 02:23| Comment(1) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ブルーなどを理解したかった。


Posted by BlogPetのリンリン at 2006年06月04日 12:49
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